2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

長部日出雄『桜桃とキリスト』

長部日出雄『桜桃とキリスト もう一つの太宰治伝』、あれ、こんなタイトルでしたっけ? と思ったら、もうとっくに文庫になっていたのですね… 買ってから2回目なので、4年振りになるけれど、文章のよみやすさとはウラハラに、意外と読みにくいことを、ナナ…

ランボー「酔いどれ船」

ランボー「酔いどれ船」についての、解釈?解説本である、篠原義近『ランボー「酔いどれ船」捜索』を読む。にしても、1つの詩について、1冊の本がかけてしまうってのは、すごいことです。そして、あまりにも多くの人が訳しているのに驚き、始めていろんな…

フェミニズムのフロント

一時はちょこちょこ追っていたのだけれど、ずいぶん『現代思想』でもフェミニズムの特集があったようで、新たに3冊を購入。いろんな新しいタームがあって、このジャンルの盛況ぶりに感心する。まずは『フェミニズムの最前線─女性の動員と主体化』から。T大…

山田登世子『モードの帝国』

山田登世子『モードの帝国』、読みました。最近のちくま学芸文庫は、なんかすさまじいですね。もえます! 山田登世子さんは、何と言ってもセルトーの『日常的実践のポイエティーク』の訳者として印象深いのですが、どこかでさらりと男性批判をしていたのをス…

「68年」の『ノルウェイの森』Ⅱ

引き続き『ノルウェイの森』、(下)。一番激しく批判してるのが、緑だったことを再確認で、それもなかなか作者である村上春樹の思いを彷彿とさせるようで、興味深かったです。『ノルウェイの森』の中では、レイコさんのエピソードとかリアルに感じていたの…

「68年」の『ノルウェイの森』Ⅰ

ということで、なんとなく「68年」のことをだらだら考え続けてるんですけど、ふと思いついて、村上春樹を読むことにしてみたのです。村上春樹の『ノルウェイの森』、まずは(上)。なんか、学生時代に一時期、仲間内で、必ず誰か1人がこれを読んでいるよ…

一緒に読む「女の決闘」

もちろん、部屋で1人で読んだわけですけど、太宰治の「女の決闘」という小説を。これは、森鷗外が翻訳した小説を、ありていにいって太宰治がパロディとして書き直したものなのですが、冒頭近くでは、「読者」(って誰だよ!)に向かってしきりに「一緒に読…

四方田犬彦『ハイスクール1968』

四方田犬彦『ハイスクール1968』は思ったより薄い本でした(物理的に)。言及されているのをみるごとにコケにされているようですが(もっともイロニカルに言及していたのはN原さんです)、勝手に厚いと思い込んでいた割りにはずいぶん薄い本で(くどい…

文化人類学コトハジメ

より何より、ホリエモン逮捕の号外を、日本経済新聞版と朝日新聞版でGETしました。 * 大学の2年だったか、3年だったか、その手の授業が開講されて仲間内でとったんですよねー(なつかしい) そしたら、赤坂憲雄さんの図式的なあまりに図式的な文化人類…

P.B.ハーイ『帝国の銀幕』

話題になっていて、各所で参照されているのをみるごとに、気になっていたのだけれど、「厚い」ので敬遠していた『帝国の銀幕 十五年戦争と日本映画』を、なんとか読み通す(といっても、ずいぶんナナメヨミをしましたが……)。「ヒューマニズム」の件を重点的…

散文的に読む『ランボー全詩集』

自分がきわめて散文的な人間であることは自他共にみとめるところでもあるのですが、いきさつがあって『ランボー全詩集』(青土社)を、やはり散文的な仕方で「通読」する。訳は、平井啓之・湯浅博雄、中地義和のお3方。何より驚いたのは、借りてきた本なの…

『岩波講座近代日本の文化史8感情・記憶・戦争』

これって、ちょっとバブリーだった時期に定期購読のようにして買ったのですけれど、その1冊『岩波講座近代日本の文化史8感情・記憶・戦争』。日本の「文化研究」の「最良の成果」なのかどうかはともかく、って、そもそも岩波発の「文化研究」ってどうなの…

円谷幸吉とその遺書

に興味を持ち、橋本克彦『オリンピックに奪われた命 円谷幸吉30年目の新証言』を手に取る。円谷幸吉の遺書が、唐十郎などによって引用されていることを知り、その印象深い「美味しゅうございました」さえ知らなかった世代として、ノンフィクションを通して、…

ひとり受賞記念、『ニート』再読

というわけで、芥川賞を受賞なさった絲山秋子さんの最新作『ニート』から表題作「ニート」を読む。文章はシンプルなのに、〈切迫〉していて、例えば〈それでここ数日というもの、恋するようにキミのことを思った。〉とかもダイレクトに響くし、〈キミ〉も嫌…

多木浩二『絵で見るフランス革命』

ちょっとフランス革命のことが気になっていて、Amazonで調べたら、多木浩二『絵で見るフランス革命─イメージの政治学─』があって即買い。新書で読んでも水準も面白さも変わらない多木浩二。すぐ浮かぶのはなんといっても『天皇の肖像』、それから『スポーツ…

今福龍太『スポーツの汀』

もう「汀」というだけで、谷崎「蘆刈」が浮かんでしまうってのは、やはりマズイんでしょうかね。今福龍太『スポーツの汀』は、本橋哲也さんのカルスタ入門書みたいので知って、先日ネット「サーフィン」中に、思いの外安い古書を発見して即買い。今福龍太さ…

太宰治「皮膚と心」

近年、フェミニズム/ジェンダー批評の文脈から何かと話題になる機会の多い太宰治「皮膚と心」を読み返す、っていうか、Uさんが正しく指摘する通りこのタイトル自体が示すところも大きく、語り手=主人公が〈女性〉であることを掛け合わせれば、ひとまずは…

懐かしの保坂和志「この人の閾」

1998年夏、って、よく覚えてる。その頃文庫で買って「この人の閾」ばかりでなく保坂和志を初めて読んだことも。そして、自分でもびっくりするくらい「すげー」と思ってしまったことも。なので、あるいは、なのにもかかわらず「この人の閾」を読むのはそ…

小川洋子『博士の愛した数式』

さて、ようやく小川洋子『博士の愛した数式』ですが、要するに、昨今いわれている「純愛ブーム」に、これもまたほどよく収まる小説としかいえないと思います。それが、あたかも異なる枠組で語られている(ように感じられる)ことの方が問題なのでは? 数式だ…

太宰治『人間失格』の冒頭

またしても、小川洋子をさしおいて、ダザイくん。で、太宰治『人間失格』なわけですけど、今回は手掛かりになりやすい結末部ではなく、写真3枚の冒頭に注目。この「写真の読み方」は気になります。表層と深層を階層化して、さらに、鑑識眼の有無と、分析時…

『カルチュラル・ポリティクス1960/70』

せりか書房の定番フォーマットで出た『カルチュラル・ポリティクス1960/70』を興味深く読む。直接的な「68年」の回避、刺激的な若い書き手、OVERVIEWなど、素材と出来とテンションにはこちらの興味もありバラツキを感じるが、ここに書いている人達の他の仕事…

小島信夫『女流』から

結局、小川洋子を途中で、小島信夫『女流』から新年読み初め。去年『水声通信』で小島信夫特集があったり、坪内祐三『「別れる理由」が気になって』が出たり、密かなブームかしら?と思っていたところに、『現代思想』の占領特集を読み返していたらすばらし…

念願

ってわけじゃないんだけど、はてなデビューです。って、基本的に読書録みたいにしようと思ったら、新年明けましてから、1冊も小説読んでないや、ははは。と、焦りながら、かつて某フェミニストが絶賛していた小川洋子『博士の愛した数式』読み出しながら、…