円谷幸吉とその遺書

に興味を持ち、橋本克彦『オリンピックに奪われた命 円谷幸吉30年目の新証言』を手に取る。円谷幸吉の遺書が、唐十郎などによって引用されていることを知り、その印象深い「美味しゅうございました」さえ知らなかった世代として、ノンフィクションを通して、僕としては、その自殺の原因に迫るというよりは、どのような人生の果てにあのような言葉が紡がれたのかに興味を持って読む。ひどく眠くつかれた一日ふさわしい、暗鬱な読書でしたが、悲壮ということを感じ、また、心打たれるものも確かにありました。「時代精神」というものは、こういう生の軌跡にこそ刻まれるものなのかも知れません。